こちらの記事は、セキュリティ専門家の松野によるニュース解説ラジオ「今日の10分セキュリティラジオ」の放送内容を文字に起こしご紹介しています。
アトラシアン株式会社は5月6日、4月に発生した同社のサービス停止について、インシデント事後レビューを発表した。(記事はこちら)
【お届けするニュースはサイバーセキュリティ専門ニュースサイト「ScanNetSecurity」の提供でお送りしています。】クラウド製品の定期メンテナンスにおいて、意図せず顧客データが削除されてしまったということです。人為的なオペレーションミスにより発生したインシデントの内容と対策について説明します。
今回のインシデントは、顧客が使用するクラウド製品のデータが意図せず削除され、アクセスできなくなりました。原因として、削除を依頼したチームと、削除を実行したチーム間の「コミュニケーションギャップ」と、リクエストされている削除の種類の確認を促す警告が表示されないという「不十分なシステム警告」が挙げられています。なお、本事象はサイバー攻撃の結果ではなく、顧客データへの不正アクセスもないということです。
再発防止策として、全てのシステムでの共通した「論理削除」の確立、ディザスタリカバリプログラムを加速し複数サイト・複数製品の削除イベントの復元を自動化、大規模なインシデントのためのインシデント管理プロセスの見直し、大規模なインシデントコミュニケーションプレイブックの作成を行うということです。
インシデントの原因として挙げられている2つの問題である、コミュニケーションギャップと不十分なシステム警告について説明します。
コミュニケーションギャップについて、削除を依頼したチームと、削除を実行したチームの間にコミュニケーションのギャップがあり、削除の対象となっているアプリのIDを提供する代わりに、アプリを削除するクラウドサイト全体のIDを提供してしまったことが挙げられています。本来、必要とされるIDとは異なるIDで、かつ広範囲を網羅するIDが提供されたことにより、想定以上のデータが削除されてしまったことが考えられます。
不十分なシステム警告について、削除を実行するために使用されたAPIは、サイトIDとアプリIDの両方の識別子を受け入れ、入力された値が正しいことを前提としていた事が挙げられています。つまり、リクエストされている削除の種類がサイトなのかアプリなのか、確認を促すような警告がなされないスクリプトであったため、いかなるIDが渡されても削除されたことが考えられます。
まとめると、人為的なミスを止める機能が実装されていないスクリプトで人為的なミスが発生したことによるインシデントであったということができます。
今回のインシデントへの再発防止策として挙げられている、論理削除、ディザスタリカバリ、インシデント管理プロセスの見直し、インシデントコミュニケーションプレイブックについて説明します。
今回は、甚大な被害を及ぼしたクラウド製品の大規模障害についてお届けしました。再発防止策は一般企業の障害対応にも参考になりますので、関連する業務に携わる方はぜひ一度目を通してみてください。
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