こちらの記事は、セキュリティ専門家の松野によるニュース解説ラジオ「今日の10分セキュリティラジオ」の放送内容を文字に起こしご紹介しています。
国立大学法人 東海国立大学機構 名古屋大学は10月29日、同学教員のメールアカウントに第三者から不正アクセスがあり、個人情報が含まれるメールが閲覧された可能性がある事案2件が確認されたと発表した。(記事はこちら)
【お届けするニュースはサイバーセキュリティ専門ニュースサイト「ScanNetSecurity」の提供でお送りしています。】大学教員のメールアカウントに不正アクセスがあり、スパムメールの踏み台にされ、個人情報が閲覧されてしまった可能性があるということです。メールのセキュリティ対策で気を付けるべきポイントについて説明します。
今回は2件のインシデントについて公表されており、いずれも海外のIPアドレスから不正アクセスがあり、大量のメール送信が行われてしまったということで、送られたのはスパムメールではないかと考えられます。スパムメールとは、メールを受信する側の意向を無視して無差別かつ大量にばらまかれるメールです。迷惑メールとしてフィルタされないようにするため、正規のメールアカウントを乗っ取ってスパムメールを送信することがあります。また、メールサーバには個人情報を含むメールが存在しており、片方の事案では大量のメールが保存されていたことから、調査に時間を要しているということです。
第三者にパスワードが漏えいした原因については明らかになっておらず、継続して調査されています。対策として、不正アクセスを受けたメールアカウントのパスワードを変更し、被害者にはメールで事実関係の説明と謝罪を行っています。また、再発防止策として、改めて個人情報保護や情報セキュリティの確保に関する教育研修を強化し、構成員の意識向上を図るとともに、メールサーバに多要素認証を導入して対策するということです。
あくまでも一般論として大学のセキュリティを考えた場合、企業と比較するとセキュリティの強制力が弱いことが考えられます。主な理由は、組織の問題と予算の問題が挙げられます。
大学では、実験や研究の目的で、学部や研究室ごとにサーバやネットワークが構築されることが少なくありません。仮に大学に情報システム部門が存在していたとしても、セキュリティが全体に浸透することは簡単ではないことが考えられます。また、大学は企業と比較してセキュリティだけでなくIT予算は限られていることが一般的です。限られた予算の中でシステムが導入されることで、セキュリティ対策が十分ではない状況を生む一因となっている可能性があります。
それらのシステムがインターネットに接続された場合、直ちに無差別のサイバー攻撃にさらされてしまいます。結果として、攻撃者がスパムメールの踏み台に利用する目的においては、大学のシステムが都合のよい状態になっているのかもしれません。
迷惑メールの踏み台にされると、スパムのブラックリストに登録されたり、メールの配送に制限がかかったり、メールの送信自体に支障が出る可能性があります。また、メールサーバのログでは気が付くことができても、メールアカウントを乗っ取られた本人が気が付くことは難しいかもしれません。
メールアカウントが乗っ取られると、受信メールを盗み見られるだけではなく、様々な問題が発生することについて説明させていただきました。個人のメールアカウントでも影響範囲は組織全体に及ぶことを理解して、特にパスワードは慎重に設定するようにしましょう。
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