こちらの記事は、セキュリティ専門家の松野によるニュース解説ラジオ「今日の10分セキュリティラジオ」の放送内容を文字に起こしご紹介しています。
大日本印刷株式会社(DNP)は7月26日、警視庁サイバーセキュリティ対策本部による「メタバースを利用した訓練実施委託」に採用されたと発表した。(記事はこちら)
【お届けするニュースはサイバーセキュリティ専門ニュースサイト「ScanNetSecurity」の提供でお送りしています。】メタバースを活用したインシデント対応の訓練について発表されています。インシデント対応の訓練に利用されたメタバースの概要と、インシデント対応が対面で行えない場合の課題について説明します。
今回の訓練は、メタバースを活用し、サイバーセキュリティ関連のインシデントが発生した際の迅速かつ適切な対応方法の習得に特化したものです。1グループ4名を基本として、同時に10グループまでの接続が可能で、多くの受講者が学べる環境が提供されています。
訓練では、各参加者に組織上の役割を割り当て、各参加者はボイスチャット機能を活用して互いにコミュニケーションを取りながら、協力してシナリオを進め、インシデント発生時に必要となる対応について学習します。参加者は実際の訓練に加え終了後の振り返りを通じて、サイバーインシデント発生時に企業が一般的に行う対処法を理解し習得することができるということです。
メタバースとは、インターネット上の仮想空間に作られた世界です。メタバースはゲームだけでなく、ビジネスや教育などでも活用されており、ユーザーは自分の分身であるアバターを操作することで、様々な活動を行うことができます。
例えば、みなさんがいつでも行ける競馬場があったらいいなと思った際に、それが実現する可能性もさることながら、仮に実現することになったとしても、物理的な競馬場を建築するには、膨大な時間とお金がかかることになります。
また、理想的な競馬場は人それぞれにあるのではないでしょうか。限られた現実空間に思い思いの世界を構築することは現実的に困難で、結果として、多くの人が満足する妥協点を見つけることになります。
このような状況で、メタバースはインターネット上に広がる無限の仮想空間に、それぞれの人が求める世界を構築することができます。加えて、自分の分身であるアバターも自由にデザインできることから、理想の世界と理想の自分で、仮想空間に生きる者同士、コミュニケーションが取られることになります。
メタバースを利用してインシデント対応を行う際の懸念点として、コミュニケーションの問題が挙げられます。普段、我々がリモートワークで感じている懸念と同様であると言うことができます。
ここ数年、在宅勤務が急速に広まり、Web会議やチャットツールなど、リモートワークに必要な環境が整備されてきました。以前のように、オフィスへ出社したり、会議室に集まったりすることが不要になり、機能的には十分に満たされている状況です。在宅勤務のセキュリティ対策としてもEDRの導入が進んだり、逆にVPNやクラウドの課題が浮き彫りになりました。
ただし、機能的には満たされているはずなのに、どこか難しさを感じている人は少なくないかもしれません。オフラインではできていたことがオンラインだとうまく行かないという、総じてコミュニケーションの問題と定義することができます。
インシデント対応も同様で、インシデント対応に最も重要なコミュニケーションが十分に取れないと、優先順位付けなどが正しくできなくなる可能性があります。例えば、緊急度の高いインシデント対応で、対策本部の会議室に張り詰めた空気と言うのは対面でこそ伝わるものですが、メタバースのアバターを通じて、インシデントの緊急性がすべての関係者に伝わるかどうかは不明です。また、技術的にもパソコンを物理的に回収しないと、デジタルフォレンジックが十分にできない場合があり、状況に応じて現実空間でのインシデント対応が必要になると考えられます。
今日の10分セキュリティラジオにて毎週月・水・金にセキュリティの最新ニュースを取り上げ解説を行っています。隙間の時間の情報収集にぜひお役立てください!
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